ジャパニーズウイスキー探求日記

ジャパニーズウイスキーにいつしか魅せられて、どんどん新しいウイスキーを飲みたくなり、知りたくなってしまいました。ここでは飲んだウイスキー、読んだ本、行った蒸溜所の記録などを気ままに綴っていきたいと思います。

カテゴリ: ヘリオス酒造

201610月、突如として沖縄のヘリオス酒造からピュアモルトウイスキー「歴」と「歴15年」が、ローソンで数量限定発売をされました。その時点では、以前に生産したウイスキーが見つかって商品化されたとのことでしたので、もうヘリオス酒造からウイスキーは発売されないなと思っていました。

 

しかし、予想を裏切り2018年に今度は「くら ザ ウイスキー ラムカスクフィニッシュ」が発売されました。こちらのボトルは「厳選したモルトを自社のラム貯蔵に使用したアメリカンオークの樽で寝かせて仕上げました」との説明があり、一転して輸入モルトからの商品化を思わせました。

 

しかし自社商品のラムの貯蔵樽を使ってフィニッシュさせたというのが、ヘリオス酒造のオリジナリティーを感じます。ということで、発売してすぐに購入してみました。

IMGS_0586

ヘリオス酒造 くら ザ ウイスキー ラムカスクフィニッシュ

HELIOS-SYUZO PURE MALT KURA The WHISKY FINISSHUD IN JAPANESE RUM BARRELS

 

製造者:ヘリオス酒造株式会社

原材料:モルト

仕様:750ml 40

希望小売価格:5,280円(税込)

発売:2018220

Nonchill-filtered(ノンチルフィルタード)、Non coloured(ノンカラード)

初回生産、約2,000本の数量限定品

 

飲んだ日:202186

タイミング:ボトルラベル上部あたり

 

香り:フローラルで南国的な甘い花の香り、若いラムのえぐみ感、ヨード、微かに糠、ようやく開いたか香りが立つ。

味:花の蜜の甘さ、ラムのえぐみとピート感、スモーキー、糠、パフューム感、キックの後に辛みが加わる。

 

口開けの頃は若いラム感が強く表れていましたが、2週間強でようやく開き始めて、こなれてきたように思えます。輸入モルトを使用しても、ピュアモルト「歴」に似たニュアンス(糠っぽいところ)があるのが面白いです。

 

このボトルについてあらためて調べようとしたところ、公式サイトが新しくなっていまして、それに合わせて「くらザ ウイスキー ラムカスクフィニッシュ」の説明も変わっていましたので、以下引用したいと思います。

 

「スコットランド × オキナワ 第一弾 提携しているスコットランドの蒸留所の厳選された原酒と、ヘリオス酒造の自社蒸留の原酒をブレンド。後熟に使用したのは、ヘリオス酒造原点の蒸留酒「ヘリオスラム」の熟成樽」とのこと。

 

具体的にスコッチウイスキーのモルトが使用されているとともに、自社蒸留の原酒をブレンドしているとされています。これが以前の「歴15年」のモルトなのか、その後蒸留された「許田」と同じものなのかは飲んだことがないのでわかりませんが、歴に似たニュアンスを感じたのは自社蒸留モルトを使用していたからなのかもしれませんね。

 

このボトルの説明には「ウイスキーのスモーキーな香りの奥からほのかに香るラム由来の甘やかなアロマ」とありましたが、自分のバカ舌と鼻にはラム感が強くて、スモーキーさに気付くのに少し時間を要しました。このウイスキーは時間をかけて飲んだ方が面白いかもしれません。
IMGS_0582

緊急事態宣言の延長でネタが枯渇しつつありますが、最近一升瓶ウイスキーを1本飲み終わりました。ヘリオス酒造のハイランダーです。

 

『ウイスキー読本』や『痛快! 地ウイスキー宣言』でざっくりとしたことは分かっているウイスキー。とはいうものの、謎が多いボトルです。

 

アウトラインとしてヘリオス酒造は1961年にラム酒の製造を開始。創業時は太陽醸造という社名でした。当時は米軍統治下でアメリカ人に需要があったようです。1969年にはヘリオス酒造へと社名変更。ギリシャ神話に登場する太陽神が由来だとか。1972年に本社工場を現在地に移転し、この時からウイスキーの製造販売を始めたようです。

IMGS_4182

ヘリオス酒造 ハイランダー

HELIOS-SYUZOHIGHLANDER WHISKY

 

製造者:ヘリオス酒造株式会社

原材料:モルト・スピリッツ

仕様:1800ml 37

希望小売価格:1,500円(198283年頃)

発売:1972年?

 

飲んだ日:2021129

タイミング:ボトル半分より少し上

 

香り:木の皮、塩気、バニラ、リンゴ。

味:バニラに青リンゴのジュレをまぶしたデザート、ピート感、塩気、香草。飲み始めにくらべて複雑な味わいがだんだん馴染んできて、バランスが良くなってきた。

 

飲む前の予想を大きく裏切る味わいです。以前に飲んだ歴に近いものをイメージしていましたが、それとはまったく別物のウイスキーです。2級酒で、アルコール度数37%。グレーンの代わりにスピリッツ使用ですが、こちらの方が本格的ウイスキーの片鱗を味わえます。

 

あらためて『痛快! 地ウイスキー宣言』を読み返すと「味うすく、まるい」7.2点、「まとまりよし、ややフレーバー低し」7点、「軽やか」5点、など多少ネガティブなところもありますが、まあまあ評判もいいようです。当時の「プレイボーイ」誌で詩人の田村隆一郎氏は「シックな王女様」とよび、東京新聞で「南国調のまろやかな味が受けている」ととりあげられています。

 

そして、このボトルは後半の方になると、進化をとげます。ボトル下から3センチくらいではラムネ、ベースにバニラ、気持ちミントの香り。味わいはラムネ、バニラから入り、チクチク感からパイナップル、香草、塩気のちキックから辛みと酸味へ深みはないけど楽しめました。

 

また、ハイボールでは甘味と酸味の香り、味わいはバニラの甘味から爽やかな酸味と苦味、独特のスピリッツ感が強いけど飲みやすいものでした。

 

さて、この原酒はどのようなものなのかが気になります。あまりにもの風味のまともさに、まず輸入原酒の使用を疑います。前掲の2冊の本にも1972年から製造販売されているという記載だけで、詳細は分からない状態です。

 

ただボトルには「DISTILLED AND AGED IN WOOD」と表記があり、実際にまろやかな味を狙ってブレンド後に再貯蔵を行っていたようです、

 

ネットでもいろいろと検索をかけましたが、分かったのはラムや泡盛の製造でまろやかな味にするために銅製蒸留機を3機使用していること。見た目は小型のウイスキー蒸溜器「ポットスチル」のようだ。樽はウイスキーと同じで内部をバーナーで焼いて、再使用すること。2000年前後に自家製のウイスキーの製造をしていた報道と証言があったこと。

 

結論は分からないのですが、自家製のモルトウイスキーを使用している可能性も十分にありえるのかなと思いました。このあたりはメーカーのヘリオス酒造さんに訊いてみたいところですね。

 

このハイランダーは地ウイスキーブームの頃は地元より大阪で売れていて、1983年頃に首都圏にまで売れ行きが広がってきていたようです。

 

その後はブームの終焉後のどこかで、日本最南端のウイスキーのキャッチフレーズで「ヘリオスウイスキー」が出てきましたが(イギリスからネーミングでクレームがついたため?ネーミング変更??)、こちらも1990年代には製造を中止。今度は1999年に台湾へ輸出用に「神谷」ウイスキーを製造・販売を開始しましたが、こちらは他社国内産モルトを使用したものだったそうです。

 

日本の地ウイスキーの存在に気がついて調べ始めると、沖縄でも蒸溜所があってウイスキーを送り出していたことを知りました。いくつかメーカーはあったのですが、ヘリオス酒造は1972年からウイスキーを製造していたらしく「ハイランダー」というブランドで関西を中心に関東まで流通させていたようです。その後、地ウイスキーブームの終焉でいつの間にか製造終了となっていたようです。

今回の「歴」は同時発売の「歴15年」を20%ブレンドしたもので、残りの原酒がどこなのかは公開されていません。20002001年頃蒸溜のウイスキーがキーモルトということになります
rekiIMG_0622

ヘリオス酒造 歴 ピュアモルトウイスキー

HELIOS WHISKY PURE MALT REKI

製造者:ヘリオス酒造株式会社

原材料:モルト

仕様:180ml 40

価格:853円(税込)

発売:20161025

ローソン限定発売

 

飲んだ日:20181022

タイミング:口開け

 

香り:麹、糠、木の樽、麦の粉っぽい甘さ。
味:硬めで糠、麦の甘さのち酸味、決してフルーティーではない、のちキックとともに辛みと塩気。後味には甘みも残る。不思議な味、熟成感はあまり無いが若さ全開というわけでもない。

 

ボトル1本のんでの感想ですが、非常に独特で他では類を見ない味わいでした。手放しで美味しいとは言えませんが、いろんなウイスキーのうちのひとつとして異彩を放っていると思います。ただ歴15年の味の方向性を再現できているのかは分かりません。このウイスキーの真髄はやはり15年熟成モノを飲まないと分からない気がします。

ところでヘリオス酒造が蒸溜をやめたのは2000年以前の可能性が高いです。1999年にヘリオス酒造は台湾向けに「神谷12年」を販売していましたが、原酒は国内の蒸溜所から購入したとのことで、この時点では原酒は残ってないと考えられていたのではないでしょうか。そうするとタンクなど熟成されないところで保管されていた期間があったのか、あるいはネット上でウイスキーの蒸溜再開を目指してテストしているという記事かブログかを見かけたことがあるのですが、その時の原酒なのか。このあたりもいろいろと謎を知りたいところです。
rekiIMG_0623

↑このページのトップヘ