新製品情報には疎い方ですが、ニッカ ザ グレーンについては何かで告知を見て事前に知っていました。宮城峡蒸溜所のグレーンウイスキー以外に、西宮工場時代のグレーンウイスキー、門司工場、さつま司蒸溜蔵の各所で製造された新旧のグレーンウイスキーたちが結集したウイスキーだと。
夢の1つに日本のすべての蒸留所およびその付近で、そこでつくられたウイスキーを飲むということがあります。門司工場とさつま司蒸溜蔵の原酒が入っているウイスキーはかなり重要なアイテムになります。しかし、本数限定で入手困難が予想されていました。
結局入手するすべもなく、発売日をむなしく過ぎていってしまったのですが、地元のバーで出合ってしまいました。出合ってしまったら飲むしかないでしょう。
NIKKA THE GRAIN WHISKY
製造者:ニッカウヰスキー株式会社
原材料:グレーン、モルト
仕様:700ml 48%
参考小売価格:12,000円(税別)
発売:2023年3月28日
数量限定:国内10,000本、海外10,000本
飲んだ日:2023年5月20日
タイミング:ボトル肩口
香り:穏やかな甘さ、オイリー、ミルクチョコレート、気持ちアルコール感と酸味。加水すると塩気が加わる。
味:穀物的甘さ、強めの塩気、旨み的な味わいとともにクリア感もある飲み口。程よいボリューム感とシャープな切れ上がりにインパクトがあり、心地よい。加水するとさつまいも的甘みとシャープさが際立つ。
ウイスキーのコクとスッキリ感があるというタイプ。これは複数のグレーンウイスキーがブレンドされているからでしょう。カフェグレーンとは違ったタイプの美味しさが味わえるニッカのグレーンウイスキーでした。
さて、このニッカ ザ グレーンについて詳しい情報を確認してみました。まずこのボトルは、2021年から展開されたディスカバリーシリーズの第3弾です。ディスカバリーシリーズは、ウイスキーの多様性や奥深さ・意外性を「発見する」シリーズとされています。
1963年にカフェ式連続式蒸溜機を西宮工場に導入してから60周年を迎えることから、ニッカウヰスキーが保有している「グレーンウイスキーの多様性」に着目して開発したそうです。歴史に名を刻むグレーン原酒と未来のために密かに打ってきた布石のようなグレーン原酒が、「ブレンドの技で束ねられ、新しい物語の序章となり時代の扉をひら」くとPRされています。
このグレーンウイスキーは4つの蒸留所でつくられた4種類の原酒で構成されていると思っていました。ところがニッカの公式サイトを見ると実際はもっと多い7種類で構成されていることがわかりました。
まず仙台・宮城峡蒸溜所のカフェ式連続式蒸溜機でつくられたカフェグレーンが基軸となり、九州・門司工場とさつま司蒸溜蔵で密かにつくられ育まれてきた2つの大麦グレーン原酒とコーン・ライ麦原酒が加わり、さらに宮城峡蒸溜所のカフェモルト、初めてカフェ式連続蒸溜機が設置された西宮工場で生まれた長期熟成タイプの稀少な2種類の原酒がブレンドされています。
モルトの複雑性のある味わいにはならないものの、なかなか他では味わえない独特な味わいは、こういったブレンド技術の賜物だったわけですね。公式サイトのコメントには「大麦とコーン・ライ麦の個性を、熟成を重ねた原酒が受けとめる。ブレンドに採用したグレーン原酒は、いずれも異なる強い個性を持っています。この多種多様な個性を活かしながらバランスよくまとめ上げることが、ブレンダーの課題」だったと記されています。
公式サイトにはさらに詳しく説明があり、「門司工場でつくられた大麦グレーンは、穀物の甘い香りとなめらかな口当たりのカフェグレーンとは異なり、豊かな大麦の香りと爽やかなキレが特徴」、「さつま司蒸溜蔵の大麦グレーンは麦の風味がより濃厚」で、さつま司蒸溜蔵でつくられたコーン・ライ麦原酒は「バーボンのような風味を持つ個性的な原酒で、コーンとライ麦の原料特有の甘さと爽やかさが、これまでのニッカウヰスキーとは一線を画す」とされています。
そして「新しい3つの個性を引き出しながらバランスを整えるために、カフェグレーンとカフェモルトは熟成を重ねた原酒を選び抜き」、「さらに、西宮工場時代につくられた長熟のカフェグレーンとカフェモルトを加えてい」るそうです。
ニッカの公式サイトでは門司工場とさつま司蒸溜蔵についても触れています。門司工場は1914年に生まれた「鈴木商店大里酒精製造所」を前身として、現在はアサヒグループの乙類焼酎の主要生産工場として稼働中。
さつま司蒸溜蔵は鹿児島県姶良(あいら)市に立地していて、90年近く前に創業された「姶伊(あいい)酒造」が前身。現在は地元鹿児島県産の黄金千貫を主に使った芋焼酎づくりがメインで、そこにニッカウヰスキーの樽熟成などの技術を取り入れているそうです。
両工場とも焼酎工場がメインですが、余市や宮城峡とは異なる新たなウイスキーづくりに積極的に挑戦しているそうです。それぞれ単一工場でのウイスキーが発売されるといいなあと思います。
最後に公式のテイスティングコメントは以下の通りです。
香り:マーマレードやサイダーを思わせる爽やかさ。ウッディでバニリック。トーストやクッキーのような、甘く香ばしい穀物の芳香。
味わい:シナモンのような穏やかなスパイス感とコーンの甘さ。ライ麦由来の爽やかで、コクとふくらみのある味わい。