ジャパニーズウイスキー探求日記

ジャパニーズウイスキーにいつしか魅せられて、どんどん新しいウイスキーを飲みたくなり、知りたくなってしまいました。ここでは飲んだウイスキー、読んだ本、行った蒸溜所の記録などを気ままに綴っていきたいと思います。

カテゴリ: 壽屋

このボトルを入手したのは2013年頃だったでしょうか。昔のトリスのロゴやデザインが好きで、1本は持っていたいなあと前から思っていました。それが壽屋時代だったら最高だなと思い、ヤフオクで狙っていました。しかし、そうそう簡単には出てこないし、落札価格も結構いい値段していました。

そんなある日、ポケットサイズで液面も低下していたからでしょうか、確か2,500円ほどで落札することができました。ラッキーだったと思います。

 

サントリーの公式サイトによると、トリスウイスキーは1946年戦後の混乱期でまともなお酒が飲めない頃に誕生。「安くてもしっかりした品質のお酒を飲んでもらいたい」という想いから発売されたそうで、当時はブルーのボトルでキャップは栓抜きで空けるタイプのものでした。

 

その後、1950年頃からトリスバーを展開、1956年には作家の開高健氏、山口瞳氏を擁した伝説のトリスバー向けPR誌『洋酒天国』を発刊。1958年には柳原良平氏によるキャラクター、アンクルトリスが登場。1961年にはトリスを飲んでHawaiiへ行こう!キャンペーンをするなどウイスキーの大衆化の先陣をきっていました。

 

このボトルは壽屋時代なので19632月以前に流通していたものになるのですが、エクストラは19602月刊のサントリーカクテルブックにはラインナップに載っていなく、196212月刊の『洋酒とカクテル』には登場しているので、この間に発売されたと想定できます。1962年は酒税法が改正されて、原酒の混和率が5%から10%へ引き上げられていること、同年8月にニッカが壽屋を追いかけるべくエキストラニッカを発売しているので、そのあたりがトリス エクストラの登場と関連があるのかもしれません。

写真 1
写真 2 (1)
壽屋 トリス エクストラ 2

KOTOBUKIYA LIMITED Torys EXTRA BLENDEDWHISKY

 

製造者:株式会社壽屋

原材料:表記なし…モルト、(スピリッツ?)

仕様:180ml 37

小売標準価格:120円(196712月刊壽屋『洋酒とカクテル』より)

発売:19463級ウイスキーとしてスタート、このボトルは1960年~1962年くらいから19632月の壽屋時代までの流通と思われます。

 

飲んだ日:2014730

タイミング:口開け

いつもはここからテイスティングコメントになるのですが、今回は以前別のブログで掲載したものをそのまま転載したいと思います(一部、微修正をいれますが…)。それが一番飲んだ時の感覚に正直だと思ったからです。以下、どうぞお読みいただければ幸いです。

 

現行のトリスエクストラと飲み比べしたいところですが、このボトルがどういう状態なのか、どう評価したらいいのか、いざとなると、まったく自信がありません。

ということでプロの方にも手伝っていただきたいと思い、2014730日に銀座にある元サントリーに勤務されていた方がやっているバーに行って一緒に味わっていただくことにしました。

 

さて、テイスティング結果は? といきたいところですが、さすがにボトリングされてから時間が経ちすぎたようです。

アルコール感がかなり抜けていました。

ぼんやりとした甘い穀物らしきものが溶け込んだ水。これが第一印象でした。

それでも、一緒に味わっていただいたのは、さすがプロのバーテンダーさんです。

スワリングを繰り返し、加水をすることでウイスキーらしさも復活。甘い香りも立ってきて、味も少しシャープになり、甘い穀物の水から、優しい穀物感の感じられる魂のこもったブレンデッドウイスキーとなりました、まだ、自分が生まれる前、昭和30年代の高度成長時代を一緒に駆け抜けたこのボトルにロマンを感じました。

 

結局このボトルはお礼の意味もこめて、そのバーに寄贈しました。自分が持っていても、将来自分が死んだらカミさんにとってはゴミ。それなら、こちらのバーにあった方がよっぽどこのボトルにとっても有意義だと思いました。

 

そういえば、一緒に飲み比べをした現行のトリスエクストラはどうだったか?というと、今のウイスキーは安くても美味いです。艶があって、トロピカル感さえ味わうことができました。

日本のウイスキーは素晴らしい!

前回復刻版の白札を投稿しましたが、本当の白札を飲んでみたいという欲求はずっと持っていました。このボトルをウイスキー好きの知り合いに飲んでもらったところ「知っているバーで白札を飲ませてもらったことがある」という話を聞きました。味もこれとは違ってもっと埃っぽい味、復刻版には余計な味が混じっているとのことでした。となれば、飲みに行くしかない!昨年末についに行けました。


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壽屋 白札 第一級(輸出仕様?)

KOTOBUKIYA SUNTORY WHISKY FIRST BORN IN JAPAN

製造者:壽屋

原材料:モルト、(スピリッツ?)-ピュアモルト表記

仕様:表記確認忘れ720ml40%?

価格:不明 -1957年では730円(壽屋『洋酒ABC』より)

発売:19294月 このボトルは1945年から1957年の可能性


飲んだ日:20181227

タイミング:ボトル1/5くらい

香り:青リンゴ、麦の甘さ、カラメル。
味:麦の甘さから入り緩やかに青リンゴの酸味、クローブ、スモーキーさはあまり感じない、現行に近いニュアンスだがやさしい、かつ気持ち濃い目か。時間が経つと香ばしさと辛味。スモーキーさの片鱗はあるかも。


ご覧の通り初期の白札ではなく、戦後の白札でした。マスターは最初から第二期にあたるであろうボトルであること(つまりそんなにスモーキーでない)、ややアルコールは抜け気味であることを知らせていただいて飲ませていただきました。とてもいい経験をさせてもたいました。



それにしても、このボトルがいつ頃のものなのかを調べるのがなかなか難しいです。あまりにもボトルが神々しくて手にとっていろいろと調べるのを忘れた(汗)のも1つの要因ですが、昔の日本のウイスキーの資料が少なすぎます。


ヒントは第一級表記なのですが、ここからは1943年~1953年まで使われたもの、かつ戦前は敵国に貴重なアルコールを輸出するとも思えないので戦後のものと推測されます。そして戦後の混乱期には米軍向けが主流になっていて戦後すぐには発売されていないと思われます。戦後版白札は1946年のトリス発売と1950年のオールド発売の間くらいと考えるのが順当でしょうか。さらに謎となるのがいつまで流通していたかですが、1953年に酒税法改正で第一級、第二級、第三級が特級、一級、二級に変更になったことで同年までのものとしたいのがやまやまです。しかし調べてみますと、その後も第をつけて表記することが許されていたらしく正確に何年で第一級から一級へ表記が変わったと言い難いらしいです。前出の19578月発行の『洋酒ABC』には白札(白レッテル表記)は一級と記されていますので、この年では第表記はされていないと思われます。つまり1946年~1957年までのどこかに流通されたものと思われます。


話は少しそれますが、白レッテル表記で面白いのは1959年『洋酒とカクテルのABC』も白レッテル、1960年『SUNTORYCOCKTAIL BOOK』では白ラベル、1962年『洋酒とカクテル』では白札とニュー白札(写真ではボトルにWhite表記あり)となっており、時代の変遷と白札へのこだわりが感じられます。


いろいろと想像とロマンは広がるのですが、このあたりをサントリーさんがきちんと歴史としてまとめていただけると嬉しいなと思う次第です。


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