記憶とはいい加減なもので、以前に買ったけど忘れているものが結構あります。レコード、CDなんかは買ってからダブっているのに気付いたことが何回かあります。本も同様で読み終わった本だけでなく、積ん読本コーナーに買ったことを忘れていた本がちらほらと。

 

このとんぼの本の『ジャパニーズウイスキー』(土屋守、茂木健一郎、輿水精一・共著)も買ったことをすっかり忘れていた本でした。幸いこちらはダブることはいませんでした。

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この本が発売されたのは20109月。まだウイスキー不況は脱しきれていませんが、ジャパニーズウイスキーがISCInternational Spirits Challenge)、WWA(World Whisky Awards)などで最高賞トロフィーや金賞を受賞し、海外から注目を集め始めたころでした。

 

巻頭は土屋守氏による「ジャパニーズの逸品たち」で、推薦のラインナップの解説があります。取り上げているのは「響12年」「響21年」「竹鶴12年」「竹鶴21年」「山崎12年」「山崎18年」「白州12年」「白州18年」「余市12年」「余市1989」「宮城峡12年」「富士山麓シングルモルト18年」「富士山麓樽熟50°」「ロバートブラウン スペシャルブレンド」「角瓶」「スーパーニッカ」「ブラックニッカクリアブレンド」「ザ・モルト・オブ・カゴシマ1984」「イチローズモルト ザ・ファイナルヴィンテージ・オブ・ハニュウ10年」「秩父蒸溜所シングルモルト・ニューボーン・ダブルマチュアード」の20本。

 

わずか10年前ですが、これらのボトルのほとんどが入手困難になってしまったことにあらためて驚きます。一方で「ブラックニッカクリアブレンド」のような割もの用のボトルが「逸品」として紹介されていることに別の意味で驚きます。まあ初心者向けの本なので、角瓶に次ぐ売れ行き良好のボトルという意味合いもあったのかもしれません。

 

時代を感じさせるものとしては「日本の蒸溜所」の項目で、軽井沢蒸留所はウイスキーの製造は止まっているものの見学や売店が残っていたこと。本坊酒造信州ファクトリ―(という呼び名でしした)は、当時稼働しておらず紹介の締めの言葉が「ここで最後のウイスキーがつくられたのは、92年のことである」と寂しげなもので、津貫まで構えた今からは考えられない状況でした。

 

「ジャパニーズウイスキー大全」の項目では、サントリー、ニッカウヰスキー、キリンビール、宝酒造、本坊酒造、江井ヶ嶋酒造、ベンチャーウイスキー、札幌酒精、笹の川酒造、東亜酒造、モンデ酒造、玉泉堂酒造、相生ユニビオ、宮崎本店、中国醸造の全体像がわかるように簡潔にラインナップを紹介しています(なぜか若鶴酒造がありません)。

 

ここの項目はあらためてちゃんと読んでみると江井ヶ嶋酒造の「ホワイトオーククラウン」は輸入スコッチ原酒を8年以上貯蔵したものだとか、玉泉堂酒造の「ウイスキーピーク」(原文ママ)は自社蒸留のモルトと英国産のモルトにアメリカ産のグレーンをブレンドしたとか、宮崎本店の「サンピースウイスキー」は自社蒸留のモルトと輸入モルトをブレンドしたなど、ここでしか載ってないような情報がさらっと書かれています。

 

買った当時はぱらっと目を通して、特に目新しい情報が無かった気がして、そのままほったらかしにしていたのですが、実は貴重な1冊でした。