ジャパニーズウイスキー探求日記

ジャパニーズウイスキーにいつしか魅せられて、どんどん新しいウイスキーを飲みたくなり、知りたくなってしまいました。ここでは飲んだウイスキー、読んだ本、行った蒸溜所の記録などを気ままに綴っていきたいと思います。

2020年08月

2020年の8月も早いものでもう終わりですね。にも関わらず、異常な暑さがどんどん増していて、これから夏バテになりそうな勢いです。皆さんも体調管理には、くれぐれもお気をつけください。

 

さて、今回はプレミアム角瓶です。今まで自宅近くの酒屋さんの店頭に並んでいたのを見かけたことはあったのですが、飲んだことがないまま気が付いたら姿を消していました。

今年の3月に初めて入ったバーに置いてあるのを見かけたので、これ幸いと注文をしてみました。

角瓶はかつて愛飲していた時期があるので、そのプレミアムバージョンというのは楽しみです。

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サントリー プレミアム角瓶

SuntoryWhisky THE PRREMIUM SPCIAL BLEND 43°

 

製造者:サントリースピリッツ株式会社N

原材料:モルト、グレーン

仕様:700ml43

希望小売価格:2,000円(税別)

発売:2013521日、20163月末終売

 

飲んだ日:2020311

タイミング:ボトル3/4くらい

 

香り:柔らかなセメダイン、薄い杏。

味:角より相当主張あり、セメダイン、ほろ苦さ、ピート感、後半にキック、若さのあるしっかりとした味わい。

 

最初にグラスに口をつけてみると、いきなりガツンとくる味わいで、そのインパクトだけが強く印象に残りました。香りや味わいはその主張がガンガンと来て、プレミアム感とはどういうものなのか今ひとつつかめませんでした。

 

ということで、プレミアム角瓶についてあらためて調べてみました。まずはサントリーさんの公式リリースだとキャッチコピーが「日本を代表するロングセラーブランド「角瓶」から、“手に届く贅沢。”をコンセプトにした新ラインナップが登場」でした。

 

2013年の発売ですが5年くらい前から角ハイボールがブームになり、さらなるファンの拡大に向けて「、“自分へのご褒美”や“大切な人と過ごすちょっと特別な時間”など、“小ハレ”のひと時にふさわしいウイスキー」としていたようです。商品開発は第4代チーフブレンダー福與伸二氏が担当し、サントリーさんの力の入れようが分かります。

 

ウイスキーには山崎蒸溜所、白州蒸溜所のシェリー樽原酒やワイン樽原酒などこだわりのモルト原酒を使い、「豊かな香りが幾重にも広がり、甘く重厚な味わいが楽しめる贅沢」な一品に仕上げているとのことですが、そこまで自分の鼻と舌では分かりませんでした。

 

ちなみにサントリーバーテンダーズクラブのプレミアム角瓶サイトは現存していて、スタンダードの角瓶とプレミアム角瓶を比較しています。プレミアム角瓶はスタンダード角瓶よりドライさ・後味のキレは低く、甘い香りが強め、香りの総量・味わいの総量そして良いんが多めとグラフで説明されています。

 

また、プレミアム角瓶の飲み方はハイボールとロックだそう。特にロックだと甘さが際立つようです。そもそもプレミアム感を得られる飲み方が違っていたのでしょうか。ストレートで評価すべきウイスキーではないかもしれませんね。

 

プレミアム角瓶は角ハイを飲んでいる人が、ワンランク上のウイスキーを目指すウイスキーだったはずでした。しかし今までビールを飲んでいた人が時代の流れでハイボールに変わっても、そういう人はワンランク上のウイスキーにはいかないような気がします。ウイスキーに対する印象や考えが変わるんだったら、山崎や白州を飲んでもらった方が早いのではないですかね。

今年のこのコロナ禍は飲食店に大きな打撃を与えています。緊急自治体宣言による休業や時短営業、そして三密対策による入店人数規制などかなり厳しい状況なのは間違いありません。そんな中、ベンチャーウイスキーさんは飲食店専用のウイスキーを6月下旬に発売しました。店舗で飲むのはもちろん、期限付き酒類小売免許を取得した飲食店では販売できるというものです。

 

ウイスキーはワールドブレンデッドで秩父蒸溜所以外にスコッチ、アイリッシュ、カナディアン、アメリカンの5大ウイスキーの原酒が使用されています。アルコール度数はホワイトラベルの46%、ブルーラベルの48%より高い50.5%。さらにモルト原酒の比率もブルーラベルよりも大幅に増やしているらしいです(公式リリース的なものが無いので正確には分かりません)。

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ベンチャーウイスキー イチローズモルト&グレーンワールド ブレンデッドウイスキー 505

VENTUREWHISKYLTD Ichiro’s Malt & Grain World Blended Whisky 505

 

製造者:株式会社ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所

原材料:モルト、グレーン

仕様:700ml50.5

価格:16,500円~20,000円(税込)ネット上での実績

発売:2020626

ノンチル、ノンカラー

飲食店での流通のみ

 

飲んだ日:2020730

タイミング:ボトル半分くらい

 

香り:ほんの優しい甘みとフルーティーさ。砂糖菓子の甘さ、桃、うっすら出汁。

味:優しい砂糖菓子の甘み、柔らかな木材、香草、最後に辛み、アルコール度数50.5度のわりに優しい。しかし後味はしっかりインパクト。加水すると、やや金属的な酸味が加わる。

 

やさしく体にじわじわと滋味が染み込んでいくような味わいでした。ただ味わいの印象はホワイトラベルとブルーラベルの中間くらいの印象でした。好みの問題で優しいウイスキーも好きなのですが、濃い味わいの方が好きなので、ブルーラベルの方がインパクトあったなあというところです。

 

ちなみに販売価格は一部の店舗はネットに載せていましたが、公にしていないところが多く、このあたりは店舗の状況に合わせて緩やかな価格設定にしていたのかなと思われます。ヤフオクではかなり高額取引をされていますが、店舗での実際の販売価格はだいたい16,500円~20,000円くらいの幅での販売実績でした。もちろんあっという間に売り切れてしまったようです。

 

今後もコロナの影響はしばらく続くことが予想されます。ウイスキー好きとしては密に気をつけながらバーに通って応援したいものです。
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縁とは不思議なもので、前回投稿した竹鶴12年を飲んでから19日後に、初号の竹鶴12年に出会うことができました。飲みたいと思っているときには巡り逢わないのに、一度きっかけがあると次々と出会いが待っているなんて人との出会いと似ていますね。

 

さて、この初号竹鶴12年は2000年というウイスキー冬の時代に、破壊力を持った商品設定をされ発売されました。希望小売価格が660mlながらなんと2,450円(税別)! ピュアモルトウイスキーとしてはこの時点では同価格帯の商品はなく、ブレンデッドでスーパーニッカより210円高くキングスランドより660円安い(ただしこの2本は750ml)というのは驚異の価格設定としか言いようがありません。

 

そういった価格設定でありながら、「モルトウイスキーでありながら、ブレンデッドウイスキーに匹敵するやわらかさをもつウイスキー」という開発テーマとどう折り合っていたのか確認してみたいと思います。

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ニッカ 竹鶴12年ピュアモルト

NIKKA WHISKYTAKETSURU WHISKY 12 YEARS OLD PURE MALT

 

製造者:ニッカウヰスキー株式会社6

原材料:モルト

仕様:660ml40

希望小売価格:2,450円(税抜)

発売:2000119日、2005921日から丸瓶に切り替え

 

飲んだ日:2020330

タイミング:ラベル上部くらい

 

香り:ミルクチョコ、リンゴ、杏、軽くスモーキー、ミネラル感。

味:濃いコーヒー、チョコレート、ほろ苦さ、仁丹、塩気、辛み、12年なのに複雑さがありかなり楽しめる。時間が経つとチョコレート感が強まる。

 

いやあ、前回投稿した2011年~2014年流通の竹鶴12年でも書いたのとまったく同じ、12年この熟成感と複雑さは本当に素晴らしいとしか言いようがないとおもいました。非常に美味しくいただきました。

 

それでも2011年~2014年流通の竹鶴12年と比較すると、こちらの方がまろやかかつスモーキーな印象がありました。新しいボトルの方はフルーティーさは強まっていますが、年代が新しいこともあり若干荒っぽさや渋みみたいなものが出ていると思いました。シェリー感が強いのかもしれません。どちらも完成度が高く、どちらがいい悪いかということも無いと思います。どちらが好きかは、もうお好み次第ですね。

 

最後にこの初号竹鶴の瓶の形がちょっと面白いので触れておきたいと思います。ベースは角瓶なのですが、上部が少し凝って複雑な形をしています。そして驚くのが17年、21年と熟成年数が変わるごとにボトルの上部が変化しています。最初は時期によって違っているのかなと思いましたが、『世界の名酒事典』で同時期に流通していて、ボトルの語りが全て違うことを確認しました。製造コストをわざわざ高くしてまでこだわったボトルということになりますよね。

この時代の1721年も飲んでみたいものですね。しかし今はヤフオク等でもお値段が高騰していて、さすがに金額的に飲むのは難しいだろうなと思っています。果たして縁があるかどうか…。

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竹鶴は御存じの通り、今年の3月末で17年、21年、25年など熟成年数が表記された製品が終売となりました。12年はそれよりさかのぼること6年前の2014年、NAに取って代わられる形で終売となっています。2014年といえばNHK連続テレビドラマ小説「マッサン」が始まった年ですが、ドラマ放映前にすでに原酒不足に陥っていたわけですね。

 

NAを取り上げた時にも書きましたが、「竹鶴」の「開発テーマは、モルトウイスキーでありながら、ブレンデッドウイスキーに匹敵するやわらかさをもつウイスキー」だそうで、武蔵屋さんのWEBサイトに残っている12年の説明文には「12年以上熟成を重ねた上質のモルトだけで仕上げた、香りがよくて飲みやすいピュアモルトウイスキーです。湧き立つような華やかな香りとスムースな飲みやすさを両立したバランスのよい味わいです」と記されています。

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ニッカ 竹鶴12年ピュアモルト

NIKKA WHISKYTAKETSURU WHISKY 12 YEARS OLD PURE MALT

 

製造者:ニッカウヰスキー株式会社6

原材料:モルト

仕様:700ml40

希望小売価格:オープン価格 世界の名酒事典の実勢価格表記2,0003,000円未満、武蔵屋で記載されている金額が2,180円(税抜)

発売:2000119日、このボトルは2011823日から、20144月終売

 

飲んだ日:2020311

タイミング:ボトル下から2センチくらい

 

香り:杏、オレンジ、明るく華やかな香り、時間が経つとミルキーも、加水するとよりいっそう華やかに。

味:オレンジから入り、ピートの効いたチョコレート、セメダイン、渋み、スモーキー、しっかりとした味わい。加水するとエッジが立ってキリッとする。

 

いやあ、12年でこの熟成感と複雑さ。素晴らしいですね。フルーティーさとスモーキーなところが宮城峡と余市のそれぞれの特徴をこの1本でしっかりと伝えてくれます。でありながら飲みやすい。開発担当の方々は相当苦労されたのではと思いますが、それが絶妙なバランスの味わいとなって仕上がったのでしょうね。

 

また、今回スペックを調べていて改めて驚いたのが、発売価格です。『世界の名酒事典』にはオープン価格表記ながら実勢価格として2,0003,000円未満とされています。そしてWEBに残っている情報でもだいたい税抜きで2,500円以内となっていました。しかも、この最終ボトルにモデルチェンジする時に660mlから700mlに増量までされていますからね。素晴らしいコストパフォーマンスです。

 

ちなみに『世界の名酒事典』2012年版で同価格帯のジャパニーズウイスキーを調べてみると、サントリー リザーブが2,300円、スーパーニッカがオープン価格で同じ2,0003,000円未満です。サントリーも竹鶴を意識してか2004年に北杜12年が2,450円で発売されましたが、こちらは一足早く2010年に終売になっています。公式な説明がなかったのか、ハイボールブームですでに原酒不足とも、竹鶴との競争に敗れたともネット上では言われているようです。

 

先に上げた竹鶴の同価格帯にはピュアモルトウイスキーは他になく、そもそもかなり思い切った製品だったんでしょうね。現在の竹鶴NAの定価が4,400円(税込)類似商品だと本坊酒造のマルステージ越百が4,620円(税込)。だいぶ高くなりましたし、NAになっていましましたが、それでも美味しくて安いので竹鶴にはこのまま頑張ってほしいですね。
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日本人によるジャパニーズウイスキーの著作物が少ないことは、以前にこちらで触れたことがあり、ます。外国の方の方が熱意を持ってジャパニーズウイスキーを調べているのではないかと書きましたが、日本人によるジャパニーズウイスキーをまとめた本がありました。

 

『ジャパニーズウィスキー 第二創世記』和智英樹・高橋矩彦/共著(スタジオ タック クリエイティブ刊)です。

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本書は201755日に発刊しており、以前に紹介した『ウイスキー・ライジング』『世界が認めた日本のウイスキー』よりもわずかに早く世に出ています。こちらは大判ではなく、普通の四六判ソフトカバーで手に取りやすいサイズとなっています。でありながらオールカラー、288ページ、手に取るとずっしりと重いです。定価も本体価格2,900円と結構いいお値段がします。

 

この著者のうちの1人和智氏は『男のスコッチウイスキー講座』『バーボン賛歌』などの本を上梓、スコッチウイスキーやバーボンを相当な本数を飲みほし、スコットランドとアメリカのバーボンの蒸溜所を計100カ所以上巡ったツワモノの方です。ここに来てあらためてジャパニーズウイスキーを考察してみると新しい発見があるのではということで、この本の企画を思いついたそうです。

 

内容は日本と世界におけるウィスキーの歴史、ジャパニーズウィスキーって?、ジャパニーズウィスキーバーのマスターインタビュー、、ウィスキーのできるまで、そして日本の蒸溜所ということで、山崎、白州、知多、余市、宮城峡、富士御殿場、江井ヶ島酒造、マルス信州、マルス津貫、秩父、額田、厚岸、静岡の13蒸溜所を訪問し取材しています。

 

さらに、ボトルインプレッションということで現実的市販ウイスキーを50本かきあつめて購入(一部入手不可能なボトルはバーのラックから拝借)して試飲、コメントとともに評価点を100点満点方式で算出しています。

 

たとえばサントリーでは白州NA、山崎12年、知多、響JAPANESEHARMONY、ローヤル、リザーブ、オールド、角瓶、白角、ホワイト、トリス<クラシック>、トリス<エクストラ>、白州蒸溜所、山崎蒸溜所。

 

ニッカであれば、フロム ザ バレル、オールモルト、竹鶴NA、竹鶴17年、余市NA、宮城峡NA、カフェグレーン、カフェモルト、スーパーニッカ、ザ ニッカ12年、ハイニッカ、ブラックニッカクリア、ブラックニッカ ディープブレンド、ブラックニッカ リッチブレンド、鶴、伊達、余市 ピーティ&ソルティ、余市 シェリー&スイート、宮城峡 モルティ&ソフト、宮城峡フルーティ&リッチ、宮城峡 シェリー&スイート、樽出し51度、2000’s宮城峡

 

と幅広いラインナップが並んでいます。絶対に入手できないボトルのコメントを読んで飲んだつもりになるのもいいですが、コメントに惹かれてきちんと購入できるボトルが並んでいるのは実用的でうれしい限りですね。

 

1924年に山崎蒸溜所で初めて日本で本格的ウイスキーがつくられてから間もなく100年を迎えます。これに向けて日本各地で新しい蒸溜所の開設が巻き起こっており、樽も杉、山桜、檜、ミズナラの採用や梅酒樽や焼酎樽の再利用など日本独自のウイスキー文化が形成されているところから『第二創世記』というタイトルにされたそうです。いいタイトルですね。

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