ジャパニーズウイスキー探求日記

ジャパニーズウイスキーにいつしか魅せられて、どんどん新しいウイスキーを飲みたくなり、知りたくなってしまいました。ここでは飲んだウイスキー、読んだ本、行った蒸溜所の記録などを気ままに綴っていきたいと思います。

2020年04月

会社の事務所近くにいい酒販店があるのは楽しいです。お昼休みにランチに出かけながら、何か新しいものは入ってないかなと物色するのはいい気分転換にもなります。八重洲地下街にあるリカーズハセガワ本店は地下街の通路からジャパニーズウイスキーコーナーが丸見えなので、特に都合がいいです(笑)

 

このボトルは2013年か14年か…そんな感じで発見し、「田舎の地酒蔵が造り、いつの間にか20年の時が経過した、濃厚で深みのある個性豊かな味わいのウイスキー原酒です」というキャッチコピーに惹かれ、思わず購入してしまったものです。

 

今思えばその頃は若鶴酒造がつくるウイスキーといっても、よく知らず謎のウイスキー扱いでした。今のようなジャパニーズウイスキーブームにはなっておらず、牧歌的な時代だったかもしれません。

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若鶴酒造 若鶴サンシャイン20

Wakatsurushuzo  SUN SHINE EXTRA SPECIAL WHISKYAGED 20YEARS

 

製造者:若鶴酒造株式会社

原材料:モルト

仕様:300ml59

希望小売価格:不明 類似ボトルで5,400円(税込)の記録あり、購入時の印象もそれくらいだったような…

発売:不明 購入したのは2013年か14年頃と思われる

以前別のブログに投稿した時は1990年蒸溜と記していますが、現在物証がありません。たぶん箱に記載されていたと思われます。

 

飲んだ日:201448

タイミング:口開け

 

香り:樽の香り、アルコール感で細かい感じがよく分からず……。加水でアプリコット感。

味:強いキックのあるアルコール感、苦味、オレンジ、ほのかに甘味。その後また強いキックのあるアルコール感。荒々しい。麦焼酎のようなニュアンスもあるかも。まだ味がうまく混ざっていなくて、それぞれが分離しているかのよう。加水をするとアプリコットが強くなる。

 

2014年当時のコメントとして、以下のように記しています。

今までこれくらい度数の強いものも飲んできましたが、正直結構飲みにくい。でも美味しいニュアンスが潜んでいるのもわかっていて、一部の人のテイスティングコメントにはまろやかとも書いています。ということはしばらく寝かせて味を開かせた方がいいのかもしれないと思いました。

 

実際にその2週間後、ボトルほぼ半分位で再び注ぐと、アプリコット系の匂いがふわっと漂ってきます。これは期待できそう。味も刺すようなアルコール感はだいぶ影を潜め、入りはやはりアプリコット、子供の頃に飲んだ液体の頓服といった感じでまろやかフルーツ系になってきました。そして、口開けから35日目、最後の一杯は十分に開いてまろやかになり、フルーティーさが楽しめるようになりました。なかなか荒くれ者でしたが、いいお酒でした。

 

さて、今回投稿するにあたって若鶴サンシャイン20年についてネットで検索をかけましたが、意外とあまり情報がないことに気が付きました。ポッキー様の「ポッキーの酒的備忘録」にやはり300mlサイズのもので詳しく記されており、90年蒸溜95年蒸溜の2種類あることが分かります。90年は2014年瓶詰で厳密には20年以上であるとのことで、自分のはこれか!と思ったら、なんとラベルの色が違いました。そこの掲載されていた写真は黒ラベル、しかし自分のは白ラベル。どうもいろいろありそうだぞと画像検索で探してみて確認できたのが以下の7ボトルでした。

 

透明ボトル白ラベル720ml 43%

透明ボトル白ラベル720ml 59%

透明ボトル白ラベル300ml 59%1990年蒸溜)

透明ボトル黒ラベル300ml 50%1995年蒸溜)

透明ボトル黒ラベル300ml 50%1990年蒸溜)

白いボトル黒ラベル(桐箱入)720ml 50%

白いボトル赤ラベル(桐箱入)720ml 59% サンシャインウイスキーシングルモルト1990名義

 

それぞれがいつ発売されて、どういう経緯でこれだけあるのか、これは若鶴酒造さんに聞くしか分からないですね。
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このウイスキーを知ったのは、行きつけのバーのカウンターに置いてあるのを見たことがきっかけです。最初はキリンの富士山麓のバリエーション?と思いながらボトルを見せてもらったのですが、製造者はサンフーズという会社でした。そういえば、甲州韮崎ゴールドという聞きなれない製品名をヤフオクで発見して調べた時にサンフーズという会社だったなと思い出しました。

 

この時は飲んでみてまあまあだった印象でしたが、その頃は特にメモもとらず過ぎ去った1本になっていました。今年に入ってそのバーでしばらくぶりにこのボトルを見かけたので、さっそく飲んでみました。

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サンフーズ 富士山ウイスキー40° Limited Edition 限定品

SAN foods WHISKYTHE FUJISAN

 

製造者:株式会社サンフーズ韮崎工場

原材料:モルト、グレーン

仕様:700ml40

希望小売価格:2,200円(ギフトBOX付)

発売:2016125日山梨県内(ホテル・百貨店・専門店・土産店)、都内のアンテナショップで先行発売20179月リニューアル発売

 

飲んだ日:2020111

タイミング:ボトル下から2センチくらい

 

香り:甘いバニラ、気持ちミネラル感、気持ちぶどうの酸味、シンプルな香り。

味:砂糖水、塩気、穏やかなピート感、アルコール由来のピリ辛感、さらりとした舌ざわり。飲みやすいが若さを感じる味わい。グレーンウイスキーでモルト感が薄まっているイメージ。

 

やはり普段飲み用のブレンデッドウイスキーと考えればまあまあというところでしょうか。ただ、以前に飲んだ時とボトルも味も少し違う印象でした。今回、このウイスキーのことを調べてみると、モデルチェンジがあったことが分かりました。

 

そもそも富士山ウイスキーは甲府市にあるミレックスジャパンという会社が企画したもので、サンフーズは委託されて製造をしていたようです。2016年に山梨県内のホテル・百貨店・専門店・土産店で先行発売をし、東京都内のアンテナショップ「富士の国やまなし館」でも販売されたりしたそうです。この時は加水用に使っていた水は山梨県韮崎市の御勅使水源地層水を使用していると20172月に出されたプレスリリースの記録が残っていました。

 

20179月に富士山ウイスキーはリニューアル新発売されていますが、この時は「海抜1,000m富士山の森林地帯その地下160mから汲み上げた富士山特有の玄武岩層が重なる地層で、長い年月をかけて磨かれた清冽な天然水で割水して仕上げています」と水が変わったことが分かります。原酒もこの時に変わったのかもしれません。

 

富士山ウイスキーは翌年モンドセレクションで金賞を受賞し、いつの間にか「Limited Edition 限定品」となっていました。何が限定されているのかは分かりませんでしたが…。

 

さて、製造者のサンフーズは輸入モルトをもとに山梨の水で加水してボトリングする会社だと思っていました。しかし2018326日のWEB版東洋経済の「「ジャパニーズウイスキー」の悲しすぎる現実 輸入モノが「国産」に化ける、緩すぎる規制」という記事でサンフーズがとりあげられており、おやっ?と思うことがありました。それは「「富士山」はジャパニーズウイスキーを名乗るが、「自社で蒸留した原酒に海外から輸入した原酒を加えて、ブレンドしている」と、担当者はあっけらかんと話す」と記事中に記されていたことです。本来記者はネガティブな意味でとりあげているのですが、自分は自社で蒸溜しているの!?と反対の意味で驚いてしまいました。

 

そして、今回久しぶりにサンフーズのホームページを見るとなんと「韮崎御勅使蒸留所ブランドサイト」ができているではないですか! 「みりんや料理酒の工場内に、現状、慎ましやかではありますが「韮崎御勅使蒸留所」が稼働してい」るそうです。蒸溜機がどのようなものか定かではありませんが、貯蔵庫らしき写真もあったりするので、いつか輸入モノとブレンドしないシングルモルトが生まれるといいなあと夢想しています(笑)

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結構昔の話になりますが、このウイスキーを初めて知ったのは銀座の老舗バーでした。昔なじみのバーテンダーさんと久しぶりに会い、珍しいボトルを味見させてもらったうちの1つでした。「もうアルコールがだいぶ抜けちゃっているけど…」と注釈入りでしたが、まるで砂糖水のような印象(その前にもだいぶ飲んでいたというのもあります)で、ボトルのラベルデザインとあいまって妙に気になるボトルでした。

 

このボトルは、2013年にヤフオクでサントリー角瓶特級とセットで出品されていたものを2,000円で落札したものです。たいした金額でもなく、味見することを楽しみにしていましたが、いざ箱入りのボトルを目の前にすると歴史を感じてしまい飲むのをためらいました。しかしそんなに多くのボトルを家に置けるわけでもなく、1年ほど寝かした後口開けしました。

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キリンシーグラム ダンバー 1

KIRIN-SEAGRAMS DUNBAR Fine Whiskey

 

製造者:キリンシーグラム株式会社

原材料:モルト、グレーン

仕様:720ml42

価格:1,710円(1982年頃の販売価格『日本産ウイスキー読本』より)

発売:1975115日北海道、および九州にて先行発売、19764月全国販売、1993年販売終了

 

飲んだ日:201455

タイミング:口開け

 

香り:セメダイン溶剤の中にほのかな甘味とフルーティー感といった具合。

味:意外とまろやかでオイリー、甘味の後にアルコール由来のスパイシーさ、正露丸、ハーブといった感じでしょうか。

 

年数を経たオールドボトル特有の柔らかさがあるかと思いますが、思っていたより飲みやすく、繊細なイメージでした。砂糖水とは違う味わいでしたが、25年以上前のもなのに十分に生きていると思いました。きちんと保存されていたのでしょう。あ、でも一緒に届いた角瓶特級はかび臭い味がしましたが…。

 

ちなみにこの後、約1ヶ月で飲み終えていますが、時間の経過とともに①とろみみたいなものが強くなった②甘さが強くなると同時に、アプリコットのような、あるいは南国フルーツ系のようなフルーティーさが生まれた③木の樽のような風味が強くなった④フィニッシュのハーブ感がより強くなるという変化がありました。結構楽しめた1本でした。

 

ネットでの評価は味に骨がなく美味しくないとあまり人気がないようです。しかし、銀座のバーではもはや殿堂入りのボトルと呼んでいましたし、浅草のこだわりバーテンダーさんのブログでもハイボールに最適とありました。実際に途中でハイボールにして飲んでみましたが、すっきり爽やかかつフルーツとハーブの主張が適度にあって、こちらも美味しかったです。

 

別のブログに以前投稿した時は、ダンバーについての情報があまりなく、調べるのに苦労した記憶があります。『日本産ウイスキー読本』によるとダンバーというネーミングは造語で意味は無いことや、飲食店に不評だったロバートブラウンのボトルの形状の轍を踏まないようシンプルにしたこと、当時緒方拳を起用したCMで量より質のキャッチフレーズで売っていたことなどが記されています。ただ当時から地味と言われています。

 

ネット情報ではpan7364さんが「ヘンリー3世のシガリロレビュー」で詳細な情報をあげられています。ロバートブラウンが特級市場でサントリーオールドには大きく水をあけられていたものの、ニッカのG&Gにかなり肉薄できたため、次に1級市場を狙ったものだそうです。しかしこちらはブラックニッカの牙城を崩すことはできず、サントリーゴールドとともに苦戦をしたようです。

※おかげさまでブログを立ち上げてから1年を経たずしてページビューが1万を超えました。ありがとうございました。
これからも趣味としてのんびりと書いていきたいと思います。よろしくお願いします。
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ジャパニーズウイスキーのオールドボトルやかつて地ウイスキーと呼ばれた地方で生産されたウイスキーのことを調べるのは、なかなか苦労が伴うものです。ネット情報ではもらてん・“ふぁじめ”氏運営の「ジャパニーズウイスキーデータベースwiki」が近年開設されたので、だいぶ全体感がつかめるようになってきました。

 

ただ詳細は不明な部分も多く、きちんと知ろうと思ったら、他にも資料を求めなければなりません。そのあたりを解消してくれる資料として重要な役割を果たしてくれるのが『痛快! 地ウイスキー宣言』穂積忠彦編著(白夜書房刊)です。
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本書は1980年代の地ウイスキーブームのピーク時の19839月に発刊されました。ちょうどジャパニーズウイスキーの消費量のピークだった時で、ウイスキーの生産が追い付かないというメーカーからのコメントが文中に見受けられます。

 

掲載されているメーカーは笹の川酒造(チェリー)、モンデ酒造(モンデクリスタル)、富士醗酵(リリアン)、東亜酒造(ゴールデンホース)、本坊酒造(マルス)、美峰酒造(サンライズ)、東洋醸造(四五ウイスキー)、玉泉堂酒造(ピーク)、江井ヶ嶋酒造(ホワイトオーク)、合同酒精(ネプチューン)、協和醗酵工業(ダイヤモンド)、金升酒造(キンショー)、愛知酒精工業(レインボー)、宮崎本店(サンピース)、中国醸造(グローリー)、日新酒類(ヤングセブン)、宝酒造(キング)、東海醗酵工業(ラッキーサン)、若鶴酒造(サンシャイン)、札幌酒精工業(サッポロウイスキー)、ヘリオス酒造(ハイランダー)、クラウン商事(クラウン)の全22社に及びます。

 

メーカーによってページ数にはだいぶ違いがありますが、内容は各メーカーの歴史から製造方法、ラインナップ、テイスティングした評価まで掲載されています。各メーカーともかなり興味を持って読み込むことができ、かつオークション等で購入する際の参考になります。もっともテイスティングコメントは5名が評価していますが、結構こざっぱりとしています。たとえばチェリーウイスキーの特級だと「原酒にややクセあり」。「モルト香快く、コクありよし。」「バランタイン型の香気、味ととのう。」「香りおだやか、舌ざわりやや若い。」「うまい。透明な感じで、さわやか。」といった具合です。

 

本書のいいところは可能な限り、蒸溜所やメーカーに行って取材をしていることです。かなり突っ込んだ聞き込みをしていて、自家蒸溜と輸入モルト使用の割合やモルトウイスキーの混和率、NAの熟成年数についても聞き出したりしており、今は自家蒸溜していないメーカーが、当時は意外にも全量自家蒸溜モルトを使用していたことなども記されている貴重な記録となっています。

 

メインの著者である穂積忠彦氏は1925年生まれの方で、残念ながら1998年にすでに鬼籍に入られた方です。東京大学農学部卒業で、醸造学で著名な坂口謹一郎氏の愛弟子だそう。社会に出てからは東京財務局鑑定部を経て、国税庁醸造試験所、協和醗酵工業東京研究所、モロゾフ酒造取締役工場長、富士醗酵工業専務取締役と酒造業界を渡り歩いた方のようです。

 

ただし、穂積氏はウイスキーメインの評論家ではなく、ワイン、日本酒の方が活躍の場が多かったようです。また評論家というよりは醸造技術の研究者・指導者・アドバイザー、酒文化の育成者としても活動しており、日本酒の越乃寒梅を世に知らしめたのはこの方だったそうです。さらに酒税法改正など既成権力への挑戦者としての側面もあったようで、かつてサントリーも穂積氏に叩かれたことがあったようです。そういった経歴と活動があっての、この1冊のようです。非常に貴重な資料です。

本坊酒造さんはウイスキーへの不思議な情熱を持っていらっしゃるメーカーと自分は認識しています。

 

というのは、もともとは鹿児島のメーカーで1949年から一升瓶に入っていたマルスウイスキーを作っていました。1960年に山梨で岩井喜一郎設計によるポットスチルを使って蒸溜を開始。1985年には設備を移転してマルス信州蒸溜所を開設。そして2016年に屋久島エージングセラーの竣工と蒸溜を中止していた鹿児島工場から製造免許を移転して津貫蒸溜所を竣工と山あり谷ありの経営環境でありながら、最終的にかなり手広い製造環境にしています。

 

そして、それだけでなくウイスキーの移動を昔から重ねているようで、鹿児島でつくったものを山梨に移動させブレンドしたりしていました。わざわざ輸送費も手間暇もかけて!

WWA2013で世界最高賞を受賞した「マルスモルテージ3プラス25 28年」は、まさにその代表格で鹿児島と山梨で3年熟成のモルト原酒を、信州でさらに25年間熟成させた複雑怪奇な1本でした。

 

この「駒ヶ岳 屋久島エージング」も、そんな本坊酒造のDNAが受け継がれ、信州で蒸留したものを遠く屋久島まで運んで熟成させているわけです。

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本坊酒造 シングルモルト駒ヶ岳 屋久島エージング bottled in 2019

HOMBO SHUZOKOMAGATAKE Shingle Malt Japanese Whisky Yakushima Aging Bottled in 2019

 

製造者:本坊酒造株式会社

原材料:モルト

仕様:700ml 58

希望小売販売価格:9,000円(税抜)

発売:20194月上旬

限定1,760

 

飲んだ日:202014

タイミング:ボトル肩口

 

香り:杏、干ぶどう、熟成された官能的なフルーツ感。

味:杏、干ぶどう、落ち着いている熟成されたフルーツ感とビターチョコ、ほろ苦さ、こってりしていて濃厚、そして後口にマンゴーの余韻が長く残ります。

 

南国系フルーツの代表的な味わいでしょうか。アルコールの度数の高さを気にせずに、美味しくて何杯でも飲めてしまうような多幸感あふれるボトルでした。

 

メーカー公式サイトには「屋久島エージングセラーの中から、シェリー樽で熟成させた原酒を主体にヴァッティング」されたとあり、このあたりのブレンダーさんのテクニックも素晴らしいものがあるのだろうと思います。本坊酒造のDNAあっての1本でしょうか。

 

それにしても以前に飲んだ津貫エージング、嘉之助蒸溜所、海外に目を向ければカバランやアムルットなど南の地で熟成されたウイスキーってなんで南国フルーツやトロピカルっぽい味わいが生まれるのでしょうか。もちろん樽によって変わるでしょうけど、ウイスキーは生きてるのだなとあらためて思います。
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